2013年12月26日木曜日

CIID Graduate

Final Project追い込み中。
CIIDを卒業し、日本に帰ってきています。最後は、まさに追い込みでバタバタしていましたが、なんとかカタチにして、発表し、卒業しました。濃密な一年でした。帰国後も忙しくしていたのもあり、まだまともにふりかえられる感じではないのですが、ちょうど先日、CIIDに関心を持った方から連絡をいただき、いくつか質問に答えたので、それを転用加筆する形で書いてみたいと思います。

というのも、少しでもCIIDに関心を持った方に、学生や研究者、アーティストとしてCIIDに絡んでいただきたいなぁという思いがあるからです。来年のCIID Interaction Design Program(1年の教育コース)には日本人学生がいないそうなので、再来年は誰かに行っていただきたいです。

質問いただけると、自分で書くのとは違うニュアンスがでてくるから不思議です。Nさん、ありがとうございます!


Q. CIIDで学んだことはなにか?マインド的なもの、スキル的なものでもかまいません。

マインド的なところが大きいかもしれません。小さなスタジオ的な雰囲気のなかで、20名ほどのクラスメートや講師の人たちと集中的にアイデアをカタチにしていく訓練をいくつも積めたのが大きな収穫だと思っています。それは、プロセスを身体で覚えていくこと、スキルを使いながら学ぶこと、グループダイナミズム、友情など、いろいろ絡まっていますが、一年経ってみて、CIIDという場所に対する記憶や愛情が大きいです。どんな学び舎も、この愛校心みたいなのが大事なのかもしれません。

スキル的には、自分にとっては全く新しいプログラミングを学べたのが良かったなと。そして、新しいAdobe系アプリケーションのいくつかにも慣れることができました。客観的に考えるとまだまだ修練が必要だと思っていますが、オンラインコースも充実していますし、今後レベルアップしていけばと考えています。

むしろ、若くて優秀なプログラマーやデザイナーと一緒に過ごしたことで彼らの技術や姿勢について理解が進んだことが、今後そういった技能を持った方々と仕事をしていく上での収穫かなと思っています

 あとは、プレゼンなどストーリーテリングもかなり重視されるので、そのことを考えながらつくったり、スケジュール管理したりする力もついたかなと思っています。自分は、リサーチやビデオ編集ぐらいのスキルしかなく、プロジェクトの終盤は、おのずとスケジュール管理やグループマネジメント、ストーリーテリング担当になっていきました。締め切りがどんどんやってくるなかで、チームで課題に取り組みながら、ある程度のクオリティを保ち、ストーリーにしていくスキルは(プレゼンやビデオでまとめることが多いです)、

それぞれすでにスキルをもっていたクラスメートたちも、その力を活かしつつ、また新しいスキルを学ぼうとどん欲でした。今年は、教え合う雰囲気もあり、スキルある同士はそれぞれの強みを教え合い、スキルの差がある場合は先生ー生徒のようになって教えてもらったりできる環境でした。僕は、リサーチやアイデアづくり、メンタルサポート(とりあえず、じっくり話を聴く)ところでなんとか貢献しようとしていましたが、受け取ったものの方が多いかなと感じています。


Q. CIIDのResearch部門やConsultancy部門はどんなところか。

CIIDの建物には、Education部門、Research部門、Consultancy部門があります。それぞれの関わりもありますが、基本的には独立して活動しています。例えば、Consultancy部門のメンバーは、いつもはクライアントワークに取り組んでおり、年に数度、Education部門で教えることがあるくらいです。

Research部門とConsultancy部門の実際の仕事は、自分たちのプロジェクトが忙しいことや、守秘義務などもあり、横から少しかいま見たり、お昼時に話をしていて伝え聞くぐらいのことしかわかりませんが、コンセプトとしては、People Centered DesignやCo-creativeなどの哲学を共有していると思います。

私の印象では、Consultancy部門の方が、リサーチや提案をつくる過程でCo-creationしている感じがします。彼らは、守秘義務がある仕事が多いので、日々の仕事について話してくれたり、みせてもらうことができないのですが、異なるスキル(デザイン、リサーチ、プログラム、プロダクト)を持った7~8名で、クライアントも一緒になって課題解決をしていく仕事をしているようです。

Research部門も、2〜3名で構成されています。どちらかというとフィジカルコンピューティングやメディアアート的な印象があり、EUのリサーチファンディングなどを中心にすすめているようです。メディアやテクノロジーに明るいメディア論者、実践者といった感じでしょうか。期間限定でやってくる研究者もちらほらいます。


Q. どんな人たちが集っているのか。

Educationのクラスメートは、デザイナーやプログラマーとしての職歴がある人たちが半数以上いますが、国も違えば教育やしてきた仕事も違う、多様性が特徴です。CIIDのファウンダーであるSimonaは、「ベストなメンバーを選ぶより、ベストなチームを作ることを念頭に選考している。」と断言していたので、私の場合も、社会学を学び、大学やまちづくり会社で働いたことがあるというヘンテコな経歴があって入れてもらえたのだと思います。自分なりにもそれを意識しつつ、仕事経験やリサーチ経験、多様な知識、ワークショップやプレゼンの経験を活かして共同作業に望んでいました。

CIIDのスタッフのなかでは、トップのSimonaは、シナリオプランニングで博士をとっているビジネス戦略よりな感じの人です。もうひとりのファウンダーである、Vinayというインド出身の先生がかなりの切れ者でぼくは好きだったのですが、今年中盤からCIIDを離れてしまいました。今でもコペンハーゲンを拠点に、Frugal Technologyなどの面白いプロジェクトを手がけています。Education部門担当のAlieも、サッカーでいうとボランチ的な役割をこなす、キーウーマンです。情報やネットワーク、コミュニティのケアは彼女が中心です。

ConsultancyのBrianは元IDEOで、日本にいたこともあるので日本語も流暢に話せます。Design ResearchやCo-creative Methodologyの専門家と言えるかもしれません。Consultancy部門には、Education部門(CIID内ではInteraction Design Programの略でIDPと言われます)出身者も含め、バランスのとれた若いインタラクションデザイナーが4〜5名います。デザイン、プログラム、プロダクト出身のひとたちです。

IDPは、CIIDの専任が授業することもありますが、2週間とかのプロジェクトが多いので、外から来る講師たちが中心です。ほとんどの講師が、デザイン会社やウェブ会社を経営している実践家です。そして、そのフレッシュな講師陣が次々とやってきて刺激を受け、課題と締め切りが生徒たちに襲いかかるところにひとつの特徴があります。

自分にとって印象的な先生だったのは、さきほどあげたVinay。そして、TellartのMatt(彼は、客員教授みたいな立ち位置で年に数回きましたし、最終試験にもきてくれました。Tellartのサイトをみると彼の得意分野がわかると思いますが、デザインやアート、テクノロジーのどの領域にも才のある名プロデューサーであり、名ティーチャーだと思っています。そして、もう一人あげるなら、MethodのChris。彼は、世界初のサービスデザイン会社といわれているLive|Workの設立者のひとりで、プロダクトの教育を受け、ウェブにも明るく、ビックデータなども好きですが、彼も細部と全体の両方をみることができるデザイナーです。彼らは、みんな30代から40代ぐらいと、自分と年齢もあまり変わらないので、刺激になります(悔しさもあります)。

講師のひとたちは、少なくて3日間、多くは1週間から2週間、CIIDでコースを担当します。一日中一緒にいるので、教わるタイミングも講義の時、プロジェクトの時、ランチの時など、いろいろです。

Q. 時間の使い方、施設の使い方などは、どのくらい自由度があるのか。

IDPは、もうBrief(シラバスのようなもの)に追われる日々です。もちろん、24時間施設が使えるので、コースの半分以上の時間は、チームの裁量でプロジェクトをすすめていきます。自分の場合も含め、家族がいる場合は、チームメートと話し合いながら、スケジュールを融通してすすめていました。

Researchは、自由な雰囲気の印象ですです。プレゼンやワークショップの準備や報告書の締め切り時が大変そうな感じです。Consultancyはいつも忙しそうです。

IDPの生徒も20名弱しかいませんし、それぞれの部門が施設を使う期間も限られているので、誰でも自由につかえます。彼らもプロジェクトによって、施設の使い方が変わってきます。


Q. CIIDの雰囲気について。講師やスタッフ、生徒との距離感など。

ラボと言われる施設、キチネットやランチスペースを共有しているので心理的にはかなり近いです。しかし、外注仕事と教育は別物という感じで、絡みは少ないです。むしろ、卒業してからConsultancyに入ったり、起業支援してもらったり(CIID Nestという起業支援プログラムが来年から本格化します)するなかで、プロフェッショナルな交流をしている感じがあります。IDP参加者は、6ヶ月余分にビザがあるので、そのまま残って就職活動したり、CIIDのプロジェクトに絡んだりという人たちが毎年一定程度います。

海外からResearcherが2ヶ月とか半年などの期間でいることも多いです。今年は、5〜6名いたでしょうか。インターンのこともあれば、来年はIntelが出しているファンドでメディア研究者がきたりもします。そういった人たちがオープンレクチャーで話すことも多いですし、お昼時などで話すこともあります。


Q. 住環境について。

家探しは結構大変です。早めにCIIDネットワークや日本人コミュニティあるいは、不動産屋さんなどとコンタクトをとって、感触を持っておくと良いと思います。私は、まったく準備していかず、最初の1〜2ヶ月かなり苦労しました。AirBnBの部屋を渡り歩く感じでした。結局、CIIDのネットワークでなんとか決めることができました。

あとは、自転車が結構充実しているのですが、そのおかげでみんなスピードあげて走っているので注意してください。ヘルメットはつけた方がいいと思いますし、朝の通勤通学時の自転車は、車線変更や信号停止など、車の運転をしているような気分になります。コペンハーゲンの街はきれいなので、運転するのは気持ちいいですが。

あとビザにもよると思いますが、本人も家族もデンマーク語の研修(英語で行われる)が無料です。IDPで参加する場合は、時間など都合つけにくいと思いますが、受講している人の話を聴くと、現地で働いていたり、結婚してデンマークに移り住んだ方など面白い背景の方も多く、現地でまた違う雰囲気の友人をつくるのも良いかもしれません。自分も、時間の余裕があれば、デンマーク語をやりたかったなと思っています。

2013年11月4日月曜日

Democratic Innovation

9月末に、知人であるWさんの紹介で某市の若手職員の研修プログラムのお手伝いをしました。テーマは、コペンハーゲン市の参加型デザイン。

CIIDに加え、図書館や文化センター、コミュニティガーデン、イノベーションラボ、コワーキングスペース、デザインセンターなど、コペンハーゲン市の参加型デザイン文化を象徴するようなところをピックアップして、連絡をとり、インタビューや見学を行いました。自分も行ったことがあるところもありましたが、しっかり見学し、話を聞いてみると、新しい発見が多く私も学ぶところが多かったです。

一連の研修ツアーが終わって感じたのは、個人から国まで、この国には様々なレベルで「民主的イノベーション」のような考え方が共有されているのではないかという仮説です。

おそらく、彼らは強く意識しているわけじゃないと思います。それでも、歴史や教育や文化に染み込んでいる「民主的」であったり、「参加型」であったり、「個人の尊厳」などの思想の影を感じぜずにはいられませんでした。

日本語にすると、少し日常から離れた専門用語のように感じる「民主主義」が、日常のなかに普通にある感じです。別の言い方をすると「質素」と言えたりもするのですが、デンマークが幸せな国だ言われている裏には、こうした人々の底辺にある考え方に「信頼」や「民主主義」が根づいているからなのかもしれません。

さらに、「平等」だったり「民主主義」だったりが意識にあるといっても、「みんなで仲良く」だけでは生き残れないご時世というのも心得ていて、各セクターにおいて、イノベーションという考え方もそれなりに共有されているようにも感じました。特に公共セクターの職員の意識の高さには目を見張るものがあります。税金が高いとこうなるものなのだろうか、とそのカラクリ(?)をさらにリサーチしたくなります。

民主的イノベーションは、あくまで私個人の仮説にすぎませんが、こうして多くの施設や取り組みを一気に訪問することは、住んでいてもなかなかできることではなかったので、やっぱり取材は面白いなと再確認するとともに、こんな面白い仕事をさせていただきありがたかったです。

参考までに、訪れたところをいくつか書き出してみます。

Copenhagen Institute of Interaction Design
学校の施設を見学。授業内容やプロジェクトについても詳しく伝える。オープンレクチャーにも参加。別日には、日本での仕事経験も豊富なCIID CounsultingのディレクターであるBrianとも懇談することができ、公共セクターのイノベーションについてディスカッションができました。私は、Brianの流暢な日本をはじめて聞けて新鮮でした。

・Norreport Torvehallerne KBH
最近リノベーションされ、にぎわいを見せるマーケット。美味しい食材やテイクアウト、コーヒーなどが立ち並ぶ。

King's Garden
市民の憩いの場。INDEX: Design to Improve Lifeの受賞展示を見に行ったが、見つけられず。。。後で調べるとかなり奥の方でやっていたらしい。

Christiania Guided Tour
現役ヒッピーのおじさんによるガイドツアー。クリスチャニアの歴史からはじまり、自治運営のされかた、ドラックとの戦い(ハードドラックをいかに追放したか)、リサイクルセンター、リサイクル家づくり、など自治区の誇りを感じる濃い内容でした。

Playground
市内に多い子ども向け公園をいくつか見学。
 
Design Society Cafe
Design for Social GoodのブックレットとINDEXのDesign to Improve Liveのブックレットが置いてあり、もらうことができた。カフェとしても、良いつくり。ここで少し過ごすだけでも、スカンジナビアと日本のデザインに、似てるところが沢山あることも気づきます。どっちが真似したのか見分けがつかなくなるほどに。

・ストロイエ商店街
最古の歩行者天国と言われるストロイエを見学。駆け足で、HAYIllums Bolighusなどの店舗もめぐりました。

市立中央図書館
ストロイエから少しはずれたところにある中央図書館も見学。一階のカフェと雑誌、横置き陳列の本が、いい感じで人のよどみと流れをつくっています。

小学校の屋上を借りて、地域の憩いの場になっているコミュニティガーデンを訪問。交通事故で休職中に関わり始めたという20代女性に案内してもらう。自由で、時間の制約もなく、何もしていなくても居られるコミュニティガーデン。いろいろな可能性を感じました。小学校のデザインにも衝撃を受けました。校門も塀もなく、そのまま街につながっている感じです。隣が大きな公園なので、公園との境界も曖昧。かなりオープンなデザイン。

省庁内デザイン事務所のMindlab。このブログでも取り上げたこともあります。2ヶ月〜半年ぐらいのプロジェクトを多様なチームですすめている。プロジェクトの進め方について具体的に聞けたのは面白かったです。デザイン思考はもちろん意識しているが、意識しすぎるわけではなく、調査ではオーソドックスな手法も結構使われているという話が印象に残っています。各方面との意識の擦り合わせに意識を砕いているところもうかがわれました。

ブラックダイヤモンドとして知られる建築。Mindlabのすぐ近くだったので、見学しました。吹き抜けが気持ちの良い建築です。古くからの建物ともつながっており、そのコントラストがまたかっこいいです。勉強するひと、仕事するひと、憩うひと、それぞれが思い思いに過ごしています。

ハッカーズスペース。メイカーズスペース。ここは本物のハッカー、メイカーたちがいて、テッキーな雰囲気に満ち満ちてました。おじさんばっかりで少々むさかったですが、オープンソース的な哲学が徹底していて、ある意味美しいと感じました。

コペンハーゲン駅から電車で10分ほどのValby地区にある図書館や文化センター、ファブラボなどを訪問。職員の方のお話も聴く。ラジコンで遊んでいた14歳の子どもに声をかけて、そのまま彼がリーダーのラジコン大会を開いた話。リーダー(おそらく部長クラス)がリスクをとって失敗する(Strategic Errorsと言っていた)とボーナスがもらえる話などが印象に残りました。大きな組織の柔軟性を高める苦労は、どの国でも変わらないのでしょう。ファブラボやゲームなど、職員の発想や興味を活かした企画も多いようにも感じました。

ファブラボはこの2月からはじまった。若いひとたちが毎日のようにやってきて活用している。レーザーカッターや3Dプリンター、ミシンなどが置いてある。絵画や陶芸のアトリエも隣接していて、そちらはさらに上の世代が中心の模様。

カフェ、コワーキングスペース、ワークショップ、ファブリケーション、等々がうまく混ざり合っている良い意味でラフな雰囲気が魅力。コミュニケーション系(ライティング、電話が中心)、グラフィック系(パソコン、2D系ソフト、会話多い)、建築系(パソコン、3D系ソフト、会話多い)でワーキングスペースが分かれているのが面白かったです。電話部屋もあり。共有ダイニングも充実。ファブリケーションでは、企業スポンサーが付き、毎週のようにイベントが開催され始めている。医療系のハッカソンなどのイベントも。

PB 43
工場跡地再開発プロジェクト。その中のコミュニティガーデンについて詳しく話を聴く。地元住民との交流が印象的だった。ここの取り組みは賞も取っているそう。

カルチャーセンター、図書館、カフェの複合施設を見学。

この他、ルイジアナ美術館や工芸美術館などは、アテンドなしで行っていただきました。某市職員のお二人が、年齢的に近かったのと課題意識が近かったのもあり、毎日のように議論をしました。アイデアスケッチやデジタルストーリーテリング、ビジネスモデルキャンバスなど、いくつかのメソッドを伝えながら、課題整理をしたり、ストーリーの作り方について実習したりしました。

リサーチャー、通訳、エデュケーター、ツアーコンダクター、などなどマルチな役回りを仰せつかって大変なことは大変でしたが、某市職員のお二人が前向きでタフだったので、楽しく過ごすことができました。

最後は、オープンしたばかりの運河沿いのジャズハウス&レストランの、The Standardで打ち上げました。

我田引水になりますが、これまでにあまりないような研修ツアーにできたのではないかと思っています。市役所の若手職員が海外に研修にでて、刺激を受けることができるこの企画は、意義があると思います。ぜひ次につながっていってほしいです(そのためのお手伝いの仕事も少し残っています)。私もこの経験を今後に活かしていきます。

そして、最後にこの仕事をつないでくださったWさんに大感謝です。できれば、一緒に回りたかったです(初めに連絡くれた時は、時間とお金があれば行きたいなとおっしゃっていました)。しかし、この仕事の準備をしている間に、Wさん、あなたは突然、この世から居なくなってしまいました。一番先に土産話を聞いてもらいたかったのに、残念でたまりません。

私は今後もずっと、こういうテーマの仕事をする時には、Wさんなら面白いって言ってくれるかな、なんて考えながら仕事をしていくんだと思います。その意味では、今後ともよろしくお願いいたします。

2013年10月21日月曜日

Industry Project 1st

9月の前半は、Industry Projectでした。企業から案件をいただき、それに取り組むというプロジェクトです。本格的に守秘義務があるので、今のところ詳しい内容は書けません。もしかしたら、数ヶ月後にはオープンにできるかもしれません。去年のIndustry Projectはオープンになっているので、こちらから見ることができます。

授業のプロジェクトでもほとんどの場合、課題設定がされるのですが(Briefと言われます)、クライアントがつくことでよりリアルな仕事に近くなります。発注側とコミュニケーションしながら、かつこちらの能力や残り時間を考えながら最終成果物を仕上げていく緊張感は、これまでとはまた少し違う緊張感でした。

今回は、プロジェクトの中身だけではなく、良いところも悪いところも含め、プロジェクトマネジメントの点でいろいろと考えさせられることが多かったです。

明日から、もう一つのIndustry Projectなので、その前に久々の更新でした。

2013年9月15日日曜日

イノベーションラボとしてのMindlab

Powering collaborative policy innovation: Can innovation labs help?

デンマークの省庁内フューチャーセンター(このペーパーでは、イノベーションラボを自称しています)として知られているMindLabの成り立ちについて書かれた論文をみつけたので読みました。来月、訪問する予定なので、その予習も兼ねて。

Mindlabは元々サイトでの情報発信がしっかりしていて、イベントにも参加し、いくつか出版物も読んでいたので、ある程度知っていたつもりでしたが、この論文は設立の成り立ちやその後の変化などが詳しく書かれています。最初から今のブランドを築いたのではなく、それなりの歴史と紆余曲折、そして戦略があったからなのだなということがわかります。

特に、組織としてはこの10年でいろいろと試行錯誤の上で変わってきたのだというところがよくわかりました。以下の分類が分かりやすいと思います。いわゆるフューチャーセンターのような活動していた第一世代から、よりプロジェクトベースの活動をするようになった第二世代(2008年以降)、そして今は、組織の一部というよりコアの部分にイノベーションを据える第三世代をめざしているようです。


しっかりしたコンセプトを持って、トップマネジメントを巻き込み、かつ状況に合わせて変化したきたMindlabのすごさは、的確で柔軟な現状認識と自己認識だったということも感じました。官僚制度の特性、マネジメントの問題、取り上げる課題など、慎重に検討しつつ挑戦というリスクを取ってきたようにみえます(少なくともこの論文の論調としては)。2008年に大きな変化があって、さらに2012年(この論文の執筆時)にも次なる変化について自己点検と戦略の見直しを行っているとのことです。

各国の研究者や実践家にも有用な資料として、こうして自らの歩みをまとめて発表しているところにも、本気でパブリックサービスを変革するんだという意気込みを感じます。
オーストラリア政府もMindlabにインスパイアされたイノベーションラボを設立予定だそうです。

省庁内外にも活動が知られてきた今後が、さらなるMindlabの本領発揮なのかもしれません。

2013年8月25日日曜日

サービスデザインのパイオニア

先週は、サービスデザイン会社の先駆けと言われている Live|Workのファウンダーでもあり、現在はMethodという会社でPrincipalをしているクリスが来て、いろいろと議論やアドバイスをしてくれました。

週の途中で、インフォーマルなレクチャーもしてくれました。サービスデザインをはじめたパイオニアでもあるので、どんな話をするんだろうと思っていたのですが、サービスデザインという言葉や手法に関しては、むしろ批判的なスタンスを持って仕事をしているようです。一応、念のために確認しますが、否定的ではなく批判的です。以下、いくつか簡単に紹介します。

例えば、サービスデザインの手法について。サービスデザインの仕事のプロセスは3つとか4つとかに分けて言われることが多いけれど、ほんとにそれでいいのだろうか、と話します。インサイトを得て、デザインし、それを現場に落とし込む。そういったサイクルをつくれば、仕事の分担もしやすいし、何よりお金が取りやすい。でも、それが本当に効率的に良いアイデアを生み出す方法なのかと。むしろ、リーンスタートアップのようにぐるぐると仮説と実践を即座に繰り返して行く方がいいのではないかと。

また、サービスブループリントについても批判の目を向けていました。もちろん、サービスの流れをマッピングして可視化することで見えてくる事も沢山ありますし、有用なところが沢山あります。でも、それってあくまで想定的なブループリントでしょと。おっしゃる通り、青写真です。

もっと実際のデータに基づいたインサイトの引き出し方が沢山あるではないか。無料のウェブ解析ソフトを使うだけでもいろんなことがみえてくるはず。あるいは、動きのあるブループリントだってできるじゃないかと。

かなり粗いまとめですが、エスノグラフィーとブループリントというサービスデザインでは中心的な手法について、いくばくかの批判的な意見を持っています。去年のサービスデザインのカンファレンスであるNEXTの講演でも同じようなテーマを話しているので、英語が大丈夫な方はご覧ください。まだ再生回数が50回と、少ないです。こちらです↓。


クリスは元々はプロダクトデザインを学んだそうです。それでも、今の工業製品みたいなものを自分は作りたいのか、大量生産して大量廃棄されるものづくりは何かおかしいんじゃないかと若かりし頃の彼は悩んだそうです。そして、結局はその頃立ち上がったばかりのウェブの世界で仕事をはじめます。それ後、2001年にサービスデザインの重要さに気づき、サービスデザイン会社を立ち上げます。そして、今はMethodで統括的な仕事をしながら(Principalってそういうことのようです)、より良い仕事の進め方やビジョンづくりに力を注いでいるようです。

こうして彼の経歴を短く振り返ってみても、どこか常に自身の学びや仕事を批判的に捉え、その度に変革してきているような印象を持ちます。研究者でもなく、ビジネスマンでもなく、自分の思いと現場の現実を行き来しながら、より良い方向を探っていく。しかも、ユーモアも厳しさも持ち合わせている彼は、正直、格好良かったです。

さて、サービスデザインのプロジェクトもついに来週で仕上げです。

2013年8月18日日曜日

Processingを夏休みの自由研究にするのなら

http://processing.org/
絵を書いたり、マイコンを制御したりすることができるクリエイティブプログラミング言語として広く使われているProcessing。もっと使えるようになりたいなと、マイペースで勉強を続けています。しかし、ちょこちょことコードをいじっていると、こういうものは小さい頃から触れているに限るなと思うわけです。

ということで、もし今、自分に小学校5年生ぐらいの子どもがいて、今夏休みの自由研究を一緒にやらなくてはならない状況になったとしたら・・・。そして、さらにProcessingをテーマにするというハイリスクな選択をしたらどうなるだろうかということをふと考えました。

この選択はかなりハイリスクです。が、万が一うまくいった場合にはメリットもあると考えられます。

メリットとしては、
・親子で新しいことに挑戦できる。(特にプログラミング初心者の親御さんの場合)
・子どもがプログラミング言語に親しむことができる。
・子どもがプログラミングを通じて、英語の世界にも興味を持つようになる。
・「お父さん(お母さん)すごい」と尊敬される。

リスクとしては、
・結局、夏休みの自由研究にならない。時間だけが浪費されていく。
・子どもがプログラミングも英語も難しすぎると思い、学年があがってもどちらにも興味を失ってしまう。
・「お父さん(お母さん)、自分でもよくわかってないのにひどい。」と蔑まされる。

などが考えられます。教える側がダメになるリスクも、教えられる側がダメになるリスクもあるので、大きな賭けと言えるでしょう。

しかし、いろんな可能性を広げてくれるプログラミング言語に少しでも取り組んで、何かしらの達成感を持つことは、悪くないどころか10年後の世界で仕事をし始める子どもたちにとって、もしかしたら将来大感謝される自分史的事件になることも大有りです。

では、このハイリスクなチャレンジに興味を持った場合、何をすれば良いのでしょうか。ここでは、特にプログラミングの知識があるわけではない親御さんを想定します。

まずは、少しばかりProcessingを勉強してみる必要があります。日本語で勉強できるサイトとしては、ドットインストールの動画がオススメです。


これだけみてすぐ分かるという方は、ちょっとしたサイトを作ったことがあったりする方かもしれません。これだけではチンプンカンプンだぁ、という方は、いくつかウェブサイトをまわって基本的事項を繰り返し学んだり、よくわからない語彙について調べたり、同じくドットインストールでHTMLやCSSなどのコースも少しのぞいて言葉に慣れてみると良いかもしれません。ざっと見積もって、半日仕事になるかもしれません。

そして、いざ子どもに教える時にどうすればいいか。

※えっと、ここまで書いてきてちょっと不安になっているのですが、ここまで書いてきたことも、これから書くことも完全に私の空想実験なので、これが正しいというやり方というわけではありません。もし・・・たられば・・・という空想をシェアしてみたくなっただけです。

さて、お子さんにどう教えるかというところでした。

私が思いついた手法(ほんと思いつきです)は、人間コンピューターお絵描きごっこです。親子でコンピューターの命令役と実行役を2人で行います。例えば、命令役が「図面の中央にいってください。そこから、2マス分右に線を引いてください。そこから、5マス下に線を引いてください。・・・・」と命令したことを、実行役が紙などに書いていくゲームをするのです。ゲームのルールは、Processingを簡素化したようなものを適当につくると良いでしょう。たぶん。

それをある程度やって、プログラミングで絵を描くことのなんとなくのイメージを身体で覚えた後で、実際にProcessingでの線の弾き方や図形の作り方、色の付け方などを学びながら、実践していきます。英語もネックになるかもしれませんが、把握すべきことはそれほど多くないので、細かいことは無視してやり続けて良いと思います。おそらく。

Processingで描く線と図形と色。これだけでもいいですし、繰り返しのコードも加えられたら遊べる範囲がさらに広がります。それらの基本的なコードの組み合わせで、いろんな図形を書いたり、思いつくことをやってみたり、実現してみたいことを見つけながら、いくつかProcessingのお絵描きをしていきます。ここまでこれたらしめたもの。お子さんは、自分で作り出す画面の世界に夢中になっていることでしょう。

最後は、描いた作品をプリントアウトして、コードと感想と一緒にまとめる。これで、素晴らしい夏休みの自由研究の出来上がりです。夏休みが終わってもお子さんは、Processingの世界にハマり、そこから英語もプログラミングも我がものとしていくかもしれません。そして親である自分も、世界が少し違って見えるようになっているかもしれません。

なんてシナリオどうりにいく保証はまったくもってできませんが、これもやってみなくてはわかりません。どなたかチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

Processingについての解説書の翻訳書も出版されています。が、これも夏休みの自由研究にするのであれば、ドットインストールの説明だけで事足りますし、活用するとしても最初の初歩の初歩のところだけで十分だと思います。




2013年8月17日土曜日

図書館のサービスデザイン


ここ2週間は、サービスデザインの課題のため現場にでていることが多いです。新しい環境を観察できるので、現場は面白いです。今回の現場は主に図書館です。図書館のサービスを観察し、サービスの改善あるいは新しいサービスを提案するというもの。

デンマークに来てから、コペンハーゲン市内の図書館に何度か訪れたことはありましたが、ここまで頻繁に通い、いろいろとプロトタイピングを行い、ゲリラインタビューを行っていると、より深く図書館、そして図書館を成り立たせているデンマーク社会の実態も見えてくるような気がします。

サービスデザインのリサーチはどちらかというと難航しているのですが、それはさておき図書館に通うなかで感じたことなどを書いてみます。

私が通っているのは、コペンハーゲン市の西側にあるValbyという地域の図書館です。こじんまりとしたこの図書館は、ちょっとした前庭付きの古い建物を改築した造りなのもあって、雰囲気の良いザ・地元の図書館です。

一番良いなと思ったのは、貸し出しはほぼ自動化されてて、それ以外の探したい本だとかそういうことを相談できる図書館員に接しやすいようなつくりになっているところです。

入り口のところにカウンターがあるのですが、それは貸し出しのカウンターではなく、行政書類の申請ができるようにと数年前からはじまった市民サービスのカウンターです。



貸し出しはほぼ自動化された機械のみ。図書館員は小さなデスクにいることが多く、気軽に相談できます。

夏休み中の10歳くらいの女の子が一人で本を探しにきて、図書館員(子ども専門)と一緒にじっくり本を探している様子は微笑ましく、ぜいたくで有意義な税金の使い方だなと感慨深かったです。私自分は、幼い頃地元の図書館に行く習慣はなかったのですが、デンマーク人の友人に聴くと、すべからく図書館は自分の庭みたいなところだったと話してくれます。

きくところによると、数年前からコペンハーゲン市の図書館は子ども向けのサービスに力を入れているらしく、親子で楽しむ場所も小学生がくつろげる場所も大人と同じぐらいの面積をぜいたくにつかって用意してあります。午後から夕方にかけて、絵本や本を選んだり、読み聞かせをしている親子や家族がぽつぽつと訪れてきます。お母さん同士の出会いの場でもあるようです。

そして、最近始まった驚きのイニシアティブが8-22です。8-22とは、8時から22時まで図書館をオープンするというもの。もともとの平日の開館時間は10時から19時です。では、これまでオープンしていなかった時間をどうするのかというと、職員は家に帰ってしまい、市民に勝手に使っててもらうのです。

この時間(Unmanned Hourと英語で言われています)に図書館に入りたい人は、元々図書館カードを兼ねているCPRカード(デンマーク在住者すべてが持つ市民カード、健康保険証みたいなものです)で暗証番号を登録するだけです。その他は、監視カメラが作動しているだけで、使いたい放題。22時近くになるとアナウンスが流れ、中に残っている人がいると警報が鳴るというシステムです。

今年からはじまった試みで、今後どうなっていくのかわかりませんが、3割を超える利用者が時間外利用しているユーザーだということです。

なんという信頼関係・・・・・・。さすがにこの話にはびっくりしました。利用者の方に話をしても「ほんとにデンマーク的だよね」とはにかみながらも誇らしげです。

18時とか19時に閉まってしまうとなると、仕事帰りに図書館に寄るのは難しいラインですが、22時なら考慮することができます。Wifiももちろん飛んでいるので、ちょっとした仕事を片付けることもできます。実際、夜間はパソコンを使いに来る人が多い印象です。パソコンが家にない人でも、ここまでオープンにしてくれたらいつでも来て使うことができます。毎日メールやFacebookをチェックしにくるという人にも話を聴きました。この試みは社会福祉的にもなんらかの良い影響があるように思います。

また、市内はもちろん国内ならどこの図書館からも本を取り寄せられるというのも魅力的です。この図書館の場合、半数以上の貸し出しが外から来た本だというので、ネットで検索して予約して取りにいくという利用者が多いようです。実際、夕方になると、本をピックアップしに来るひとが増えてきます。取り寄せられた本は、日付別に並べられているので、そこまで自分で取りに行き、自動貸出機で借り出すだけです。滞在時間数分で出て行くひとも少なくありません。

貸し出しの効率化、図書館員の充実、図書館解放などにちょっとした工夫が見られる以外、この図書館は飾り気のないシンプルな図書館です。しかし、何度も訪れて観察するにつれて、素朴だけどビジョンを持って経営されているように感じます。

さて、サービスデザインのセッションはあと2週間です。どんな提案ができるのか、利用者の皆さんや図書館員の皆さんの協力も得て、なんとか良いコンセプトを生み出したいと思います。